Amphipoda 端脚目>Senticaudata>Phliantidae ミノガサヨコエビ科
非常に扁平なヨコエビで、体型は楕円形。体色は緑~褐色で、辺縁の白斑はある個体とない個体がいる。腹部を曲げた状態で体長3㎜ほど。潮下帯の様々な海藻上に生息する。国内では北海道、八丈島、神奈川県、三重県~大阪府、瀬戸内海、福井県、長崎県から報告がある(有山, 2022)。
国外ではオーストラリア南東部および周辺の島々、ニューギニア島沿岸に分布し、タイプ産地はオーストラリアのワトソン湾である。Ishimaru (1986) は日本、オーストラリア、パプアニューギニアで採集されたミノガサヨコエビを比較し、互いに形態的な差異が見られることを報告している。
Ishimaru (1986) は本種の形態を丁寧に説明しているうえ、ネットでタダで読めるのでオススメ。
雌雄で形態的な差が少ないが、雄のほうが体幅が狭く、やや楕円形になる傾向がある(Coleman & Lowry, 2012)。確実に雌雄を判別するには、成熟雌の覆卵葉や抱卵・抱子を確認するか、雄の第7胸脚付け根にある生殖器を確認する必要がある。
小型の雄個体が成熟サイズの雌個体の背面に乗っかっている様子を観察した。交尾前ガードをしていたのかもしれない。
第1腹肢柄節は変形しない。第2,3腹肢柄節内側は突出する。第3腹肢内肢は痕跡的(矢印)。
●近縁種との識別
Coleman & Lowry (2012) が本属の検索表を提供している。
ミノガサヨコエビ属の中で胸節背面の正中線上にキールをもたないのはミノガサヨコエビと I. marleneae , I. orientalis の3種類である。I. marleneae は体型が正円に近いことで本種と区別できる。I. orientalis は本種によく似るが、第2小顎の外板と内板は明確に分かれ、内板末端の剛毛は数が少なく頑強なことで区別できる。
現在のところ、日本国内からはミノガサヨコエビ1種類しか報告されていない。I. marleneae は西オーストラリアのニンガルリーフ(Ningaloo reef)、I. orientalis は極東ロシアのポシェト(Posjet)がタイプ産地。