2022年4月1日金曜日

クビナガワレカラ Caprella equilibra Say, 1818

     Amphipoda 端脚目>Senticaudata亜目>Caprellidae ワレカラ科 

図1:クビナガワレカラ雄 成体
2022年1月神奈川 潮下帯ワカメから採集


 半透明なワレカラで、体長は15㎜に達する。コスモポリタン種で世界中に広く分布している。日本では九州沿岸から日本海側は青森、太平洋側は千葉までみられる。汽水~海水まで様々な環境に適応する。

 第2咬脚付け根の間に鋭い突起があることが最大の特徴(図3a)。第2胸節が最長節。第1触角は長く、体長の1/2を越えることもある。成熟個体でも頭部に棘をもつ個体ともたない個体がいる。鰓は円形~楕円形。


図2:シロガヤに付着するクビナガワレカラたち
2022年1月神奈川 外洋に面した岩礁域


 海藻やコケ虫群体、ガヤ類、人工物などの上にみられる。主な餌はデトリタスだが、ヒドロ虫上の個体はヒドロ虫も食べているようである。


図3a:図1雄の第2咬脚付け根
左第2咬脚は取り除いてある

 第2咬脚付け根の間に鋭い突起をもつ。さらに、成体では第2咬脚付け根付近に側棘をもつ。


図3b:図1雄の第2咬脚、第5-7胸脚
第7胸脚指節が途中で折れている


 第2咬脚基節はあまり伸長しない。前節は卵形で、毒歯は三角状突起の近くに位置する。第5-7胸脚には把握棘がある。


ーーーーーー成長に伴う変化ーーーーーー

 有元(1971)には成長に伴う形態変化が詳細に記録されている。主な変化は、成熟個体で第2咬脚付け根に側棘が現れること、老熟個体では頭部に棘が現れ、鰓が円形から楕円形に伸長することなどである。また、ワレカラ属(Caprella)に一般に共通することだが、雄では成長に伴い第1,2胸節や第1触角柄部、第2咬脚が著しく伸長する。有元は頭部に成長ホルモン分泌腺があり、頭部に近い胸節ほど影響を受けるためだと予想している。


ーーーーーー類似種との比較ーーーーーー

 第2咬脚付け根の間に大きい突起をもつ点で、オナガワレカラ(C. iniquilibra)やフドウワレカラ(C. iniqua)は本種に似る。両種とは以下の点で区別できる。

・オナガワレカラ(C. iniquilibra Mayer, 1903):老熟個体も頭部に棘をもたない。成熟個体はクビナガワレカラと比べ、第2咬脚基節が細長く伸長する。鰓は線形で細長い。対馬海峡や台湾沿岸から報告がある。
・フドウワレカラ(C. iniqua Arimoto, 1980):毒歯が大きく、鰓は小さい。第2咬脚付け根の側棘がない。タイプ産地は大分県。


<参考>
・有元石太郎(1971)Caprellidae(われから科)の成長にともなう体形の変化:Caprella equilibra SAY の場合, 甲殻類の研究, 4.5, pp. 196-203.
・Arimoto I (1976) Taxonomic Studies of Caprellids (Crustacea, Amphipoda, Caprellidae) Found in the Japanese and Adjacent Waters. Special Publications from the Seto Marine Biological Laboratory, Ⅲ, 229pp.
・Arimoto I (1980) A New Caprellid Amphipod, Caprella (Caprella) iniqua sp. nov. from the Sargassum Region of Oita Prefecture, Japan. Japanese Society of Systematic Zoology, 18, pp. 27-29.
・竹内一郎(1995)ワレカラ亜目. In; 西村三郎. 原色検索日本海岸動物図鑑[II]. 保育社, pp.193-205.
・Alarcón-Ortega LC, Guerra-García JM, Sánchez-Moyano JE and Cupul-Magaña FG (2012) Feeding habits of caprellids (Crustacea: Amphipoda) from the west coast of Mexico. Do they feed on their hosting substrates?. Zoologica Baetica, 23, pp. 11-20.