Amphipoda 端脚目>Senticaudata亜目>Caprellidae ワレカラ科
図1a:ホソワレカラ雄 老熟個体
2022年3月新潟 ウミトラノオから採集
前回の脱皮から時間が経っているのか体表が海藻に覆われはじめている
雄は体長15㎜に達する。世界中の温帯~亜寒帯の海に分布し、地中海、アフリカ沿岸、アラビア半島南部、大西洋西岸、太平洋などで報告がある。タイプ産地は黒海。日本では北海道~九州沿岸に分布する。ガラモ場で一般的なワレカラで、ホンダワラ類からよく採集される。
体色は付着する海藻と同じ色をしていることが多い。第1触角は体長の1/2未満。最長節は第2胸節。第2咬脚基節は短く、老熟個体でも伸長しない。第2咬脚前節は厚みがあって細長い。第5-7胸脚は太短い。
体節上に目立つ突起はなく、特に若齢個体では種同定が難しいことがある。ただし、雄は腹部付属肢の先端が鉤状になる(図2c)ことで、他のワレカラ類と明確に区別できる。
図1b:ホソワレカラ雌成体 図1aと同日同所で採集
雌の第2咬脚は第2胸節の前端に位置し、とても小さい。前節は卵形。全体的に体が平たい。
図2a:雄左第2咬脚
図2a-cは図1a雄の付属肢
前節腹面中央に把握棘を伴う掌部突起があり、掌部末端に三角状突起がある。
図2b:雄左第5-7胸脚
第5-7胸脚は大型個体ほど頑強。本種は前節腹面に把握棘をもたない。
図2c:雄腹部腹面
雄の腹部付属肢先端が鉤状になる。ただし、腹部付属肢自体が小さく観察しにくい。ーーーーーー類似種との識別ーーーーーー
カギノテワレカラ(C. subinermis)やツガルワレカラ(C. tsugarensis)は外見が本種に似るが、第5-7胸脚に把握棘をもつ。
北日本沿岸では本種の若齢個体とキタワレカラ(C. bispinosa)の棘がない個体がよく似ている。キタワレカラの第5胸節は第6胸節の2倍の長さに達するのに対し、本種ではそれほど長くならないことで識別できる。腹部付属肢の形も識別に役立つ。
<参考>
・Arimoto I (1976) Taxonomic Studies of Caprellids (Crustacea, Amphipoda, Caprellidae) Found in the Japanese and Adjacent Waters. Special Publications from the Seto Marine Biological Laboratory, Ⅲ, 229pp.
・竹内一郎(1995)ワレカラ亜目. In; 西村三郎. 原色検索日本海岸動物図鑑[II]. 保育社, pp.193-205.
・細野隆史・宗原弘幸(2001)北海道南部臼尻周辺に出現するワレカラ類(甲殻綱,端脚目,ワレカラ科). 北海道大学水産科学研究彙報, 52 (1) , pp. 11-37.
・Ⅰから学ぶワレカラ図鑑 ~Taxonomic Study of Caprellids~ β版 ver. 4.0. 最終閲覧日2022年4月1日.