2022年3月30日水曜日

キタワレカラ Caprella bispinosa Mayer, 1903

     Amphipoda 端脚目>Senticaudata亜目>Caprellidae ワレカラ科 


図1:キタワレカラ成熟♀
2022年3月新潟 潮下帯ホンダワラ科褐藻(タマハハキモク?)から採集
70%エタノールで固定後に撮影

 北日本沿岸では数が多い北方系のワレカラ。雄では30㎜に達する。タイプ産地はサハリンで、国内では厚岸湾(北海道)、陸奥湾(青森)、佐渡島(新潟)のほか、館山湾(千葉)、来島海峡(愛媛)から報告がある(Arimoto, 1976)。

 頭部に突起をもたない。第2胸節が最長節で、鰓は細長く線形。第5-7胸脚前節はいずれも把握棘をもたない。

 体節背面に鋭い棘が並ぶことが大きな特徴だが、棘の本数にはかなり個体変異がある。第2胸節背面後端に、前方に向かって屈曲する1対の棘をもつことはすべての成熟個体に共通するものの、それ以外の棘がすべて消失する個体もいる。


図2:子守中の雌 生時の体色はこんな感じだった

 北日本沿岸にはバラトゲワレカラ(C. carinata)、ナガホソトゲワレカラ(C. longidentata)など外見がキタワレカラに酷似したワレカラが分布する。それぞれの種はかいつまむと以下の特徴からキタワレカラと区別できる。

・バラトゲワレカラ(C. carinata):第2,5胸節が最長節。第2胸節背面後端の棘は必ずしも存在しない。第5-7胸脚前節に把握棘をもつ。
・ナガホソトゲワレカラ(C. longidentata):成熟雄は体節や第2咬脚が伸長する。第5-7胸脚前節に把握棘をもつ。


<追記>

 ねこのしっぽラボさんに雄のキタワレカラの詳細な写真が掲載されています。これらの個体は背面の棘があまり消失していないパターンのようです。
キタワレカラ(Caprella bispinosa)の画像集 (coocan.jp)


 葛登支生き物図鑑さんに棘が消失した雄の写真が掲載されています。幼体の写真なども掲載されておりとても参考になります。ただし、あくまで素人の意見ですが、一部誤同定が疑われる写真も含まれているようなのでご注意ください。
葛登支生き物図鑑 - キタワレカラ (google.com)


<参考>

・Arimoto I (1976) Taxonomic Studies of Caprellids (Crustacea, Amphipoda, Caprellidae) Found in the Japanese and Adjacent Waters. Special Publications from the Seto Marine Biological Laboratory, Ⅲ, 229pp.
・Utinomi H (1943) The Fauna of Akkeshi Bay XIII. Caprellidea. 北海道帝國大學理學部紀要, 8 (3), pp. 283-300.