Amphipoda 端脚目>Senticaudata亜目>Caprellidae ワレカラ科
現状 Caprella penantis Leach, 1814 はコスモポリタン種と考えられており、太平洋、大西洋、地中海に広く分布しているとされている。しかし近年では地域ごとに異なる遺伝子をもつ集団が証明されつつあり、分類が見直されはじめている(Cabezas, 2022 、 Sánchez-Moyano & Guerra-García, 2015 など)。そのため、このページでは日本産のマルエラワレカラを便宜的に "広義の Caprella penantis" として扱うことにする。
体長約10㎜前後で、15㎜を越えることもある。日本では北海道から九州の、外洋に面した沿岸から内湾まで様々な環境でみられる。潮間帯下部から潮下帯の海藻上によくみられるが、付着する基質は紅藻や褐藻、海草、カイメン、ヒドロ虫、コケムシ、ソフトコーラルなど多岐にわたる。
頭部先端の前方に伸びる額角と円形の鰓が大きな特徴。第2-4胸節はほぼ同長で、体節は全体的に頑強。第1触角の長さは体長の1/2未満で、第2触角の内側には剛毛を具える。
マルエラワレカラは同種内でも体色や胸節、付属肢など形態が著しく異なる。日本産のマルエラワレカラでは、体節が頑強なRタイプと体節が細いSタイプに大別される。RタイプはSタイプに比べ、第1触角柄部が太く頑強であり、第5胸節背面先端部がより角ばる、第2咬脚前節の剛毛がより密であるなどの特徴がある。また、Rタイプは外洋に面したガラモ場に、Sタイプは内湾域に多いことが知られている。
マルエラワレカラは雄が雌の体を折りたたんで押さえつけるように交尾前ガードを行う。
マルエラワレカラは種内変異が激しいうえ、C. andreae(和名はウミガメワレカラ?)や C. glabra(スベスベワレカラ)など似た種が多い。以下の特徴から類似種と区別できる。
・雄の第2咬脚前節には、近位部に鋭い突起、遠位部に長方形の突起がひとつずつある。
・第5-7胸脚腕節は正方形に近い(明確に縦長にはならない)。前節近位部に把握棘をもち、掌縁はやや凹む。
第2咬脚基節は伸長しない。前節は卵形。成熟した雄では近位部に尖った突起、遠位部に長方形の突起をもつ。掌部に剛毛が生えるが、その密度は個体変異が激しい(図1aと1b参照)。
第5-7胸脚腕節(第5節)は幅と長さがほぼ同じで、正方形に近い。前節(第6節)近位部に1対の把握棘をもち、掌部は凹型。
・Arimoto I (1976) Taxonomic Studies of Caprellids (Crustacea, Amphipoda, Caprellidae) Found in the Japanese and Adjacent Waters. Special Publications from the Seto Marine Biological Laboratory, Ⅲ, 229pp.
・竹内一郎(1995)ワレカラ亜目. In; 西村三郎. 原色検索日本海岸動物図鑑[II]. 保育社, pp.193-205.