2022年8月6日土曜日

Pseudocrangonyx dunan Tomikawa, Nishimoto, Nakahara & Nakano, 2022

Amphipoda 端脚目>Senticaudata>Pseudocrangonyctidae メクラヨコエビ科

図1:Pseudocrangonyx dunan ♀
体長約5.3㎜(スケール: 1㎜)
※体長:額角~尾節板後端までPC上で計測
本ページの個体はsoma(@somainsect1213)氏に標本提供して頂きました

 与那国島の洞窟でのみ見つかっているメクラヨコエビ。ホロタイプの雌は体長4.8㎜、パラタイプの雄は体長4.3㎜。種小名はタイプ産地である与那国島の与那国方言での呼称「ドゥナン」に由来する。


<雌の形態>

図2:P. dunan ♀
体長約7.9㎜(スケール: 1㎜)
※体長:額角~尾節板後端までPC上で計測

 図2の個体について解剖して形態を確認した。この個体は覆卵葉が発達した成熟雌であった。ホロタイプの個体と比べ体が大きい、第1触角が短い、第3尾肢が細長いなどの差はあるが、他の付属肢の形態の類似性と採集地から P. dunan と同定した。

 第1触角の長さは体長のおよそ45%(記載論文では60%とあり、この点が異なる)。胸節背面に小さい刺毛が生える。第2咬脚より第1咬脚のほうがやや大きい。鰓は卵型。生時の体色は透明で、消化管内におそらく生息地の堆積物がみられる(※1参照)。


図2-a:腹部、尾部

 腹節背部後縁、腹側板遠位部に刺毛を具える。


図2-b:触角、口器

A: 左第1触角、A': 副鞭:柄部は3節、鞭部は16節、副鞭は2節。

B: 左第2触角:柄部は5節で第3-5節の内側に刺毛を具える。第4,5節は同長。鞭部は6節。 

C: 左大顎:大顎鬚は3節。第2節内側に14本、第3節外側2本・内側10本・遠位側3本の刺毛を具える。

D: 左第1小顎:鬚は2節。内板に4本、外板に7本、鬚第2節に4本の刺毛を具える。

E: 左第2小顎:内板内側に2本の長い刺毛を具える。

F: 左顎脚:鬚は4節。


図2-c:咬脚内側面(左右反転)

A: 左第1咬脚:前節は卵型で掌縁に棘を具える。指節の先端が欠損している。

B: 左第2咬脚:前節はやや細長い。前節・腕節の後縁に長い刺毛を具える。


図2-d:胸脚(外側)、腹肢(頭側)、尾肢(外側)、尾節板(背側)

A: 左第3胸脚、B: 左第4胸脚:第3, 4胸脚は形が似ている。

C: 左第5胸脚、D: 左第7胸脚:左第5-7胸脚は細長く、第6, 7胸脚はほぼ同長。

E: 右第1腹肢、F: 左第2腹肢、G: 左第3腹肢:柄部の外側遠位角に短い刺毛をもち、内側遠位角に1対の連結棘をもつ。柄部の中央に毛はない。

H: 左第1尾肢:内肢は柄部のおよそ80%の長さ。外肢は内肢のおよそ80%の長さ。

I: 左第2尾肢:内肢、外肢はそれぞれ柄部のおよそ120%、60%の長さ。

J: 左第3尾肢:内肢を欠き、外肢は2節からなる。この個体の第3尾肢は記載論文の図より細長い。

K: 尾節板:長さは幅の1.1倍で、切れ込みの深さは尾節板全体の長さのおよそ30%(ホロタイプでは36%)。


<雄(パラタイプ)の形態>

 第1触角は体長の50%。第2触角の内側に雌にはないcalceoliがみられ、第2尾肢副肢先端に角ばった刺毛をもつ。


※1:soma氏、ぷらなりあ氏の撮影した素晴らしい生態写真をどうぞ!

https://twitter.com/somainsect1213/status/1552227292776202241

https://twitter.com/himeyokobai/status/1552248903437000704

<参考>
Tomikawa K, Nishimoto Y, Nakahama N & Nakano T (2022) A New Species of the Genus Pseudocrangonyx (Crustacea: Amphipoda: Pseudocrangonyctidae) from Yonaguni Island, Southwestern Japan, and Historical Biogeographic Insights of Pseudocrangonyctids. Zoological Science, 39 (5). pp. 1-11.