Amphipoda 端脚目>Hyperiidea クラゲノミ亜目>Eupronoidae
図1:おそらく未成体の♀。
2020年12月神奈川 夜間岩礁帯で採集
スケールは1㎜
マルオアシネコゼ属の一種。ノコギリマルオネコゼ E. armata あるいは E. intermedia の雌だと思われるが、大きさからおそらく成体ではないことや同定形質を確認できなかったことから属止めとした。マルオアシネコゼ属は、雄の頭部に吻があり、第2触角が伸長することなどから雌雄を判別できる。基節が大きく膨らんでいるのは第5・6胸脚で、第7胸脚は退化的(図1には写ってない)。
ノコギリマルオネコゼの雌は全長4.8-7.8㎜、E. intermedia の雌は全長3.7-4.7㎜で、両種とも生時には赤みがかった紫色の斑点がある。図1の個体も採集時には色素胞が拡大していて、全体的に紫色をしていた。
図2a:尾部背面
第2・3尾肢の内肢・外肢はどちらも葉状で、先は尖らない。第1尾肢の内肢・外肢は先が尖り、両側に鋸歯がある。尾節板は三角形で先端は尖らない。
図2b:♀第1咬脚
第1咬脚長節(第4節)は腕節(第5節)より明らかに大きい。
図2c:♀第2咬脚
第2咬脚は鋏状。腕節の突起は先端が尖り、台形にはならない。長節は腕節より小さい。
マルオアシネコゼ属のうち図2a~cの特徴を満たすのはノコギリマルオネコゼと E. intermedia のみ。Tashiro(1978)によると、2種は以下の点が異なる。
・ノコギリマルオネコゼ(E. armata Claus, 1879):全長がより大きい(6.0-10.0㎜)。雄の頭部は丸く、吻はわずかに突出する程度。第5胸脚基節前縁は雌雄とも凹状。第7胸脚の末節は幅と長さが同じくらいで、円形~洋梨状。
・E. intermedia Stebbing, 1888:全長がより小さい(4.0-5.5㎜)。雄の吻がより突出する。第5胸脚基節前縁は雄では直線~やや凹状だが、雌では凸状。第7胸脚の末節は幅より長さが長く、細長い卵状。
ーーーーーーEupronoidaeについてーーーーーー かつてネコゼウミノミ科(Pronoidae)だったマルオアシネコゼ属とトガリオアシネコゼ属(Parapronoe)の2属を含む。Zeidler(2016)によると、両者は以下の点から識別できる。
・マルオアシネコゼ属(Eupronoe Claus, 1879):第5胸脚の坐節(第3節)は基節(第2節)の遠位端に接続する。第2・3尾肢の内肢・外肢は葉状(先が丸い)。
・トガリオアシネコゼ属(Parapronoe Claus, 1879):第5胸脚の坐節は基節の遠位端より少しずれた位置に接続する。第2尾肢の内肢・外肢は針状(先が尖る)で、鋸歯縁を具える。第3尾肢の外肢は針状だが、内肢は葉状のこともある。
<参考>
・森美由貴・鈴木夕紀・八巻明香(2010)日本周辺海域における端脚目クラゲノミ亜目全出現種リスト. 日本プランクトン学会報, 57 (1) , pp. 41-54.
・Tashiro, J.E. (1978) Comparison of Eupronoe armata Claus, 1879, and Eupronoe intermedia Stebbing, 1888 (Amphipoda, Hyperiidea). Crustaceana, 34 (1), 76–82.
・Vinogradov, M.E., Volkov, A.F. and Semenova, T.N. (1996) Hyperiid amphipods (Amphipoda, Hyperiidea) of the world oceans. Smithsonian Institution Libraries, 632pp.
・Zeidler, Wolfgang (2016) A review of the families and genera of the superfamily PLATYSCELOIDEA Bowman & Gruner, 1973 (Crustacea: Amphipoda: Hyperiidea), together with keys to the families, genera and species. Zootaxa, 4192 (1) , 001-136.