2022年1月25日火曜日

ノコバウミノミ Brachyscelus crusculum Bate, 1861

      Amphipoda 端脚目>Hyperiidea クラゲノミ亜目>Brachysceldae ノコバウミノミ科

図1a:♂ まだ若い個体
2020年1月静岡
標本・写真提供 ぷらなりあ@趣味垢(@himeyokobai)


 ノコバウミノミ属(Brachyscelus)のタイプ種。雌は最大体長21㎜、雄は17㎜。暖海性で大西洋、太平洋、インド洋、地中海と世界中に分布しており、比較的個体数も多い。日本では黒潮域でみられる。外洋の海表面~水深300-400mに生息している。


図1b:70%エタノール固定後の様子
A2:第2触角

 ノコバウミノミ科は、雌は第2触角をもたないが、雄は折りたたみ構造の第2触角をもつことで雌雄を判別できる。ノコバウミノミ雄の頭部前端には突起があるが(追記参照)、この個体の頭部は丸い。小型個体の場合、雄でも頭部の突起は不明瞭であるらしい。雌は成熟しても頭部に突起はなく、丸い。

 一見すると雄でも頭部が丸いマルノコバ B. globiceps (Claus, 1879) や B. macrocephalus Stephensen, 1925 に似ているが、第1咬脚腕節や第5・6胸脚の形などが異なる。


図1c: G1-2:第1~2咬脚 P3:第3胸脚

 第1咬脚腕節(第5節)遠位前縁の角は張り出し、葉状になる。第3胸脚前節(第6節)後縁に細毛列がある。


図1d: P5-7:第5~7胸脚

 第5~6胸脚基節(第2節)は幅広い。第6胸脚坐節(第3節)は小さく、基節前縁の葉に完全に覆われる。第7胸脚は小さいものの、7節全てが揃っている。


図1e:尾部背面 封入時に潰してしまった
U1-3:第1~3尾肢 T:尾節板

 第2・3尾節の融合節(=double urosome;黒点線で囲った部分)は幅と長さがほぼ同じ。尾節板は幅より長さが長い。第3尾肢の内肢と外肢は幅広く、特に内肢はそれが顕著。


<追記>

 「Nob!!の勝手に甲殻類」のブログに体長5.6~7㎜のノコバウミノミが紹介されています。そのくらいの大きさになると雄頭部の突起が明確になるようです。第1咬脚腕節の葉もより伸長しています。

ノコバウミノミ:続チリモンことはじめ(その3)

<参考>

・山路勇(1966)日本海洋プランクトン図鑑. 保育社, 538pp.
・Vinogradov, M.E.,  Volkov, A.F. and Semenova, T.N. (1996) Hyperiid amphipods (Amphipoda, Hyperiidea) of the world oceans. Smithsonian Institution Libraries, 632pp.
・森美由貴・鈴木夕紀・八巻明香(2010)日本周辺海域における端脚目クラゲノミ亜目全出現種リスト. 日本プランクトン学会報, 57 (1) , pp. 41-54.
・Zeidler, W. (2016) A review of the families and genera of the superfamily PLATYSCELOIDEA Bowman & Gruner, 1973 (Crustacea: Amphipoda: Hyperiidea), together with keys to the families, genera and species. Zootaxa, 4192 (1) , 001-136.