2021年12月3日金曜日

オオハマトビムシ Bulychevia ochotensis (Brandt, 1851)

   Amphipoda 端脚目>Senticaudata亜目>Talitridae ハマトビムシ科 

図1:オオハマトビムシ中型個体(上♀、下♂)
2021年9月北海道 打ち上げられたコンブ目褐藻の下
スケールは1㎜×5

 日本では北海道東部の海岸にのみ分布する、亜寒帯性のハマトビムシ。体長20~25㎜に達する。体色には変異があるようだが、筆者がみた生息地では上の個体のような薄茶色の個体が多かった。

図2a:赤い体色の雄。図1と同日同所で採集。

 第2触角柄部は太くならず、鞭状部とほぼ同じ長さ。この個体は右に比べて左の第2咬脚が小さかった。

図2b:♂右第2咬脚(外側)

 雄の第2咬脚前節の掌縁は直線的で(赤線)、角に小さな突起がある(水色線)。観察した範囲では、小型の雄ほど掌縁が斜めになり、角の突起が小さかった。

図2c:♂右第6胸脚(内側)

 第6胸脚基節板後葉の前下縁は強く膨らむ。

図2d:尾節と尾肢

 第1尾肢外肢に棘縁があることや、第3尾肢柄節下縁に棘がないことなどが特徴。

 この海岸でとれたオオハマトビムシには2種類のダニ類(図3a,3b)が便乗していた。

図3a:ヤリダニ科の1種?

 体長0.5㎜程度の大きさのダニ。調べた中ではスカラベダニ属(Scarabaspis)のダニによく似ていたが、若ダニだったので同定できなかった。図2の雄個体の体表から1個体だけ得られた。

図3b:コナダニ類の第2若虫(ヒポプス)

 体長0.2㎜程度で、こちらは多くのオオハマトビムシに付着していた。コナダニ類のヒポプスは自分より大型の動物に便乗し、拡散することが知られている。

<参考>
・森野浩(2015)ヨコエビ目. In; 青木淳一. 日本産土壌動物 分類のための図解検索 第2版. 東海大学出版部, pp.1069-1089.
・森野浩・向井宏(2016)砂浜フィールド図鑑(1) 日本のハマトビムシ類. 海の生き物を守る会, 14pp.